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抵抗したため、1496年にスペインが全島を支配下におくまで、実に90余年の歳月を要した。
その後も、カナリア諸島は、ヨーロッパから新大陸及びアフリカ大陸へ海上交通の要路にあたるため、数多くの侵略攻撃をうけている。最も著名なものは、テネリフェ島へのイギリスによる3大攻撃で、1657年のブッラク、1906年のヘミング、1797年のネルソンによるもので、現在テネリフェ市の紋章に3つの豹の頭として象徴されている。
しかし、外国艦隊の攻撃はそのつど撃退され、1797年のネルソンの攻撃を最後に平穏となった。1852年スペインは、サンタクルスデテネリフェ(テネリフェ島)を諸島の首都として、自由貿易港制度を発足させ、カナリア経済の基盤を作った。
コロンブスは1492年に新大陸発見の途次、ゴメラ島に寄港、補給をしているほか、グランカナリア島でも船の修理を行っており、彼の偉業の拠点となった。
カナリア地方の産業は、農業(トマト、バナナ、ピーマンなど)、漁業(イカ、タコ、マグロ、イワシなど)の第一次産業、および港湾サービス・観光の第三次産業の2つに大別されるが、近代第三次産業にウェートが高くなっており最近ではGDP(国内総生産)の約7割を占めるまでになっている。そのうちでも特に観光はカナリア諸島の重要な産業となっている。
わが国との関係では、カナリア諸島から近い西アフリカ、サハラ沖からモーリタニア沖にかけて、タコ、イカなどの豊富な漁場があり、1959年トロール操業を開業して以来、最盛期には数十隻がラスパルマスを基地に操業していた。
その後、各国の領海拡張などにより同操業は急速におとろえたが、市民が親日的なこと、気候が比較的よいこともあり、現在はトロール船にかわって多くのマグロ漁業が漁獲物の積み換え、修理、補給、休養などのため寄港しており、依然としてわが国にとって重要な漁業基地となっている。
また、ラスパルマスは国際的漁業基地となっているため、商社の漁業部門をはじめ各水産会社の貿易部門もラスパルマスを拠点としてタコ、イカなどの買付けを行っている。
なお、1990年におけるカナリア諸島からの魚介類の対日輸出は、金額べースでスペイン全体の66%、重量べースで72%を占めている。
人種はスペイン人および少数のスペイン人と原住民グワンチェ族との混血であり、宗教は大部分がカトリックを信仰している。
生活様式はスペイン本土と大差ない。
商店は午前10時から13時頃まで、昼食およびシェスタ(昼寝)のため休みを長くとり、午後は4時頃から8時頃までで、タ食は午後9時頃から始まるのが普通である。
一般に治安は良好であるが、近年悪化の傾向にあり、特に港の近くは危険が多い。住宅地であっても地域によってはひったくり(路上強盗)などがあるので注意を要する。立入禁止区域は軍関係施設を除けばほとんどなく、写真撮影も同施設および美術館などの特別の場所を除けば原則として自由である。

 

 

 

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